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単語帳を開くと、ひとつの単語に意味が①②③④と並んでいる。全部覚えようとして、3日後にはひとつも残っていない。私はこれを何年もくり返しました。
やめたきっかけは、springという単語です。春・バネ・泉・ぜんまい。訳が4つ載っていて、共通点がないように見える。ところが調べてみたら、もとは1個の動きしかありませんでした。
この記事では、意味を複数覚えるのをやめて、1個の動きに戻して考えるやり方を書きます。全部の単語でやる必要はありません。どの単語だけ調べればいいかの線引きまで含めて手順にしました。
単語帳の「意味①②③④」で落ちるのは、覚え方の問題じゃない
意味が4つある単語を覚えるとき、私たちは無意識に「4個の別々の暗記」をしています。spring=春、spring=バネ、spring=泉。そのつど新しい項目が増える。単語1000個の本のはずが、実際に覚える項目は3000個近くになります。
覚えられないのは、記憶力が弱いからではなく、覚える対象の数が本の見た目より多いからです。ここを減らさないまま回数だけ増やしても、消える速さのほうが勝ちます。
もうひとつ困るのが、実際の文で出てきたときです。覚えた4つのどれにも当てはまらない使われ方をすると、そこで止まる。訳を4つ持っていても、5つ目には対応できません。
コアイメージとは「1個の動き」のこと
コアイメージは、その単語がもともと持っている1個の動き・1個の状態のことです。訳ではありません。日本語に置き換える前の、動きそのものを指します。
springのコアイメージは「勢いよく飛び出す」。これだけです。あとは、何が飛び出すかで訳が変わっているだけです。
| 飛び出すもの | 日本語の訳 |
|---|---|
| 草木・生命が地面から | 春 |
| 水が地面から | 泉・温泉 |
| 金属が押されて戻る | バネ・ぜんまい |
| 人・動物が地面から | 跳ぶ |
覚える項目は4個から1個に減りました。減っただけでなく、5つ目の使われ方が出てきても推測できる状態になります。spring to mind(ぱっと思い浮かぶ)を初めて見ても、飛び出すが分かっていれば意味の見当がつきます。
これが、訳を並べて覚えるのとの一番の違いです。訳は増える一方ですが、動きは1個で止まります。
実例1|spring:春・バネ・泉が同じ理由
もとの意味は「跳ねる・噴き出す」
springは古い英語のspringan(跳ねる、噴き出す)から来ています。季節の名前が先にあったのではなく、動きの名前が先にあって、あとから季節に使われたという順番です。
冬のあいだ何もなかった地面から、草が一斉に出てくる。あの時期を「飛び出す季節」と呼んだ。それが春になりました。順番が分かると、なぜ春がspringなのかを暗記する必要がなくなります。
springだけをもう少し詳しく見る場合は、springが春とバネと温泉で同じ理由にoffspringやspringboardまで含めて書いています。
覚える量がどれだけ減るか
- 訳で覚える場合:春/バネ/泉/跳ぶ/ぜんまい/突然生じる=6項目
- 動きで覚える場合:勢いよく飛び出す=1項目
単語帳1ページぶん、だいたい10単語。そのうち訳が3つ以上ある単語が3〜4個あります。そこだけこのやり方に切り替えると、1ページの暗記項目が20個以上減る計算になります。
実例2|present:贈り物・現在・出席が同じ理由
presentは、SNSで「これも謎だった」と一番多く挙がった単語です。贈り物、現在、出席している、提出する。並べると関係がなさそうに見えます。
コアイメージは「目の前にある」です。pre(前に)+ esse(ある)が語のかたち。これ1個で全部つながります。
| 何が目の前にあるか | 日本語の訳 |
|---|---|
| この時間が | 現在 |
| その人が | 出席している・いる |
| 物を相手の前に差し出す | 贈り物・贈る |
| 資料を相手の前に出す | 提出する・発表する |
プレゼンテーションも同じ語です。相手の前に出す、という動きだけを見れば、贈り物とプレゼン資料は同じことをしています。
アクセントで名詞と動詞が変わる理由や、representまで一気に読める話はpresentが贈り物と現在と出席で同じ理由にまとめました。
ここまで来ると、present tense(現在形)とpresent a report(報告する)を別々に覚える必要がなくなります。
実例3|hot:熱い・辛い・人気が同じ理由
hotは、温度の言葉として覚えている人が多い単語です。ところがhot topic(話題の)、hot sauce(辛い)、This song is hot(いま来ている)と使われる。
ここでのコアイメージは「刺激が強い・勢いがある」です。温度はその中のひとつでしかありません。
- 皮膚への刺激が強い → 熱い
- 舌への刺激が強い → 辛い
- 世の中での勢いが強い → 人気の・話題の
- 追いかける勢いが強い → hot on the trail(すぐ後ろに迫って)
warmとの違いや、人に対して使うときの注意はhotが熱いと辛いと人気で同じ理由に書いています。
日本語でも「熱い試合」「アツい人」と言います。温度から勢いへ広がるのは、英語だけの発想ではありません。知らない言い回しではなく、すでに知っている感覚のほうを頼りにできる単語です。
実例4|run:訳が645個ある単語をどう扱うか
runは、オックスフォード英語辞典の改訂で動詞の語義が645個とされた単語です。全部覚えるのは無理ですし、覚える必要もありません。
コアイメージは「止まらずに動き続ける」。走るは、その中の人間版です。
| 何が動き続けるか | 日本語の訳 |
|---|---|
| 人の足が | 走る |
| 機械が | 作動する・動いている |
| 水が | 流れる |
| 会社の活動が | 経営する・運営する |
| 色がにじんで | 色落ちする |
| 選挙戦が | 立候補する |
run a shop(店をやっている)は、訳で覚えると「なぜ走るが経営になるのか」で止まります。動きで見れば、店が止まらずに動いている状態を指しているだけです。
runだけで1本書いています。645個の語義がどう1個に戻るかはrunが「走る」と「経営する」で同じ理由にまとめました。
1個の動きは、日本語の擬態語1語に置き換えると速い
「勢いよく飛び出す」のような説明文でも通じますが、日本語の擬態語1語に落とすと、理解の速さが変わります。これはThreadsで読者の方に教えてもらった読み方です。flushを「ビャー」と言われた瞬間に、全部つながりました。
| 単語 | 1個の動き | 擬態語 |
|---|---|---|
| spring | 勢いよく飛び出す | ポンッ |
| present | 目の前にある | スッ |
| hot | 刺激が強い | ヒリッ/カーッ |
| run | 途切れずに動き続ける | ずーっと |
| fall | 上から下に落ちる | ストン |
| free | しばられていない | スルッ |
| flush | 一気に流れる | ビャー |
擬態語にできない単語は、まだ動きが1個に絞れていないサインです。その場合はもう一段ほぐしてください。
読者の方から届いた単語
Threadsでこの話を書いたとき、返信で単語を教えてもらいました。順番はいただいた反応の多かった順です。
- run|途切れずに動き続ける。走る・機械が動く・道が続く・会社を動かす
- present|目の前にある。贈り物・現在・出席
- fall|上から下に落ちる。秋・滝・落ちる
- hot|刺激が強い。熱い・辛い・人気
- free|しばられていない。自由・無料
- flush|一気に流れる。水を流す・顔が赤くなる・データを消す
日本語側にも同じ構造があると教えていただきました。「ハル(春)」は「張る(芽がふくらむ)」から「爆ぜる(飛び出す)」の音で、springと同じところに着地しています。
全部の単語でやらなくていい|調べる単語の選び方
ここが一番大事なところです。コアイメージを全単語でやると、単語帳を1周する前に終わります。私は一度それで挫折しました。
1|訳が3つ以上ある単語だけ
訳が1つか2つの単語は、そのまま覚えたほうが速い。table=机で困ることはほぼありません。調べる価値があるのは、辞書を開いたときに訳が縦に並んでいる単語だけです。
2|中学で習った単語を優先する
get / take / run / come / set / hold / present。簡単なはずなのに、文の中で出てくると意味が取れない単語。ここが一番効きます。
逆に、難しい単語ほど意味は1個です。ambiguousは曖昧な、しかありません。長くて難しそうな単語のほうが、実は覚えるのは楽です。
3|やらなくていい単語
- 固有名詞・地名・専門用語
- 訳が1つしかない単語
- 次の1週間で使う予定がない分野の単語
「面白いから調べる」を始めると止まらなくなります。面白さは残しつつ、調べる対象は訳が3つ以上のものに絞る。これで週に5〜6個です。それで十分です。
基本動詞12個の早見表|まずここから
調べる順番に迷ったら、この12個から始めてください。どれも中学で習っていて、どれも訳が3つ以上あります。1個の動きを先に入れておくと、あとから出てくる句動詞がまとめて読めるようになります。
| 単語 | 1個の動き | そこから出る訳の例 |
|---|---|---|
| get | ない状態から、ある状態へ移る | 手に入れる・着く・理解する・〜になる |
| take | 自分で選んで、自分の側へ引き寄せる | 取る・持っていく・(時間が)かかる・受け取る |
| have | 自分の範囲に持っている | 持つ・食べる・経験する・〜させる |
| make | 形のないものに形を与える | 作る・〜させる・(お金を)稼ぐ・成る |
| put | あるところに置く | 置く・入れる・(言葉に)する |
| come | 話し手のほうへ近づく | 来る・行く(相手の側へ)・〜になる |
| go | 話し手から離れていく | 行く・進む・(状態が)〜になる |
| give | 自分の手から相手へ渡す | 与える・伝える・(力を)出す |
| keep | その状態のまま保つ | 保つ・続ける・預かる |
| hold | 動かないように押さえておく | 持つ・開催する・(電話を)切らずに待つ |
| set | あるべき場所にきちんと据える | 置く・設定する・(日程を)決める |
| turn | 向きや状態を変える | 回す・曲がる・〜に変わる |
この表は暗記するものではありません。辞書を開く前に、これを1回だけ見てから訳を並べると、共通点が見つかる速度が変わります。
すでに1本ずつ書いたもの
- run|走る・経営する・流れる・立候補するが同じ理由(止まらずに動き続ける)
- spring|春・バネ・泉が同じ理由(勢いよく飛び出す)
- present|贈り物・現在・出席が同じ理由(目の前にある)
- hot|熱い・辛い・人気が同じ理由(刺激が強い)
- put on|着る・太る・音楽をかけるが同じ理由(表面にのせる)
- take off|脱ぐ・離陸する・急に売れるが同じ理由(くっついていたものが離れる)
- get over|乗り越える・回復する・忘れるが同じ理由(越えて向こう側へ)
- get|手に入れる・着く・分かるが同じ理由(ない状態から、ある状態へ移る)
- take|取る・持っていく・時間がかかるが同じ理由(自分で選んで引き寄せる)
- put|置く・入れる・言い表すが同じ理由(どこかに置く。行き先とセット)
- have|持っている・食べる・してもらうが同じ理由(自分の範囲の中にある)
- make|作る・させる・成立させるが同じ理由(なかったものを形にする)
- come|来る・行く・浮かぶが同じ理由(話の中心にいる場所へ近づく)
- go|行く・〜になる・鳴るが同じ理由(今いる場所から離れていく)
- turn|回す・曲がる・〜になるが同じ理由(向きを変える)
- give|あげる・渡す・放つが同じ理由(自分の側から離して外へ出す)
- keep|保つ・飼う・〜し続けるが同じ理由(崩れないように留めておく)
- hold|つかむ・開催する・待つが同じ理由(つかんで動かないようにする)
- set|置く・沈む・固まるが同じ理由(決まった位置にきちんと据える)
put on / take off / get over は、表の put・take・get に前置詞が1個ついただけです。動詞側の1個の動きが入っていれば、句動詞は前置詞の分だけ足し算すれば読めます。
やり方の手順|1単語5分
- 訳を全部書き出す。辞書に載っている順に、そのまま並べる。ここで意味を考えない
- 全部に共通する動きを1個だけ探す。名詞で考えず、動きで考える。「〜が〜する」の形にすると出てきやすい
- その動きで、各訳を説明し直す。説明できない訳が残ったら、共通の動きの取り方がずれています。もう一段ざっくりした動きに戻す
3で詰まったときは、語源を引きます。etymonline(英語ですが、単語を入れるだけ)か、日本語の辞書の語源欄で足ります。語源そのものを覚える必要はありません。共通の動きを見つけるための材料として使うだけです。
書き出すのはスマホのメモで足ります。ノートを用意すると、ノートを用意する日で終わります。
コアイメージの限界|これだけでは話せるようになりません
読むのは速くなる。でも、出てこない
このやり方を続けると、読むときと聞くときは明らかに変わります。知らない使われ方が出てきても止まらなくなる。
ただし、自分から出てくるようにはなりません。これは私自身がそうでした。springの話は説明できるのに、会話でspringを使ったことは一度もない。入れる作業と出す作業は別物で、入れるほうをどれだけやっても出るようにはならない。
出す場所を先に決めてから覚える
発音だけを見るスクールは何社かあって、料金も、どこまで見てくれるかも違います。先に決めるのは料金ではなく、自分がどこで止まっているかのほうです。発音矯正スクールを「どこで止まるか」で比べる|料金表より先に自分の段階を決めるに、料金と期間をまとめてあります。
順番を逆にしたほうがうまくいきます。覚えてから話す場を探すのではなく、出す場所を先に確保して、そこで詰まった単語を調べる。詰まった単語は訳が3つ以上あることが多いので、選び方の基準ともきれいに一致します。
- 書いてから話す形:自分の文を書いて添削を受けてからレッスンに入る形式。覚えた単語を自分の文で使えたか確認できます。書く工程があるぶん、その場で出てこなくても取りこぼしません。
Kimini英会話(学研・無料体験あり) - 回数を気にせず試す形:レッスン回数無制限で、予約なしで始められる形式。使ってみて通じなかった単語をその日のうちに調べ直す、という回し方に向いています。
ネイティブキャンプ(予約不要・レッスン回数無制限・無料体験7日間) - 音まで直してもらう形:意味は自分で戻せますが、音は自分の耳では判定できません。出しても通じなかったのが単語のせいなのか音のせいなのかは、外から見てもらうのが速いです。カウンセリングだけ受けて、どこで止まっているか確認して帰ることもできます。
シャベリッシュ(旧ハツオン)の無料カウンセリングで聞く10問(ミライズ英会話が運営)
どちらも無料体験の範囲で、出す場所として使えるかどうかは判断できます。合わなければやめればいい話です。詳しい比較は英会話サービス比較にまとめています。
よくある質問
語源を知らないとできませんか
いりません。手順の2で共通の動きが見つかれば、語源は飛ばして構いません。語源は、見つからないときの材料です。
コアイメージが辞書やサイトによって違います
違って当然です。1個の動きに戻す作業には正解がありません。自分が全部の訳を説明できる言い方であれば、それが正解です。他人の言葉を覚え直すと、また暗記が1個増えます。
TOEICのスコアには効きますか
直接は測れません。ただ、Part 5とPart 7で「知っている単語なのに文の意味が取れない」で止まる回数は減ります。知らない単語が原因で落としているのか、知っている単語の使われ方で落としているのかは、TOEIC・スコアの記事で切り分け方を書いています。
このシリーズの記事
- spring|春・バネ・泉・跳ぶ → 勢いよく飛び出す
- present|贈り物・現在・出席・提出する → 目の前にある
- hot|熱い・辛い・人気の・怒っている → 刺激が強い
- take off|脱ぐ・離陸する・急に売れる → くっついていたものが離れる
- get over|乗り越える・回復する・忘れる → 越えて向こう側に行く
- put on|着る・太る・音楽をかける → 表面にのせる
単語のリクエストはSNSでもらったものから順に増やしていきます。
まとめ
- 意味が4つある単語は、4個覚えるのではなく1個の動きに戻す
- 調べるのは訳が3つ以上ある単語だけ。それも中学で習った簡単な単語から
- 手順は、訳を並べる → 共通の動きを1個探す → その動きで訳を説明し直す
- コアイメージで読むのは速くなるが、話せるようにはならない。出す場所は別に用意する
まずはspringか、presentか、自分の単語帳で訳が一番多く並んでいる単語をひとつ選んでください。5分で終わります。
意味は自分で戻せる。音は戻せない
ここまでの手順は、辞書と単語帳があれば自分で進められます。訳を並べて、共通の動きを1個見つける。それだけです。
自分で確かめにくいのは音のほうです。コアイメージで読めるようになっても、その単語を口に出したときに通じるかどうかは別の話で、自分の発音がどこで崩れているかは録音しても判定しにくいところがあります。
発音だけに絞ったコーチングもあります。シャベリッシュ(旧ハツオン)の無料カウンセリングで聞く10問(ミライズ英会話が運営。旧ハツオンから名称・料金・講師体制が変わっているので、最新の受講条件は公式で確認)は、申し込む前に、今の自分の音がどこで崩れているかを見てもらう場が用意されています。


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