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3割、5割、また3割。英語の会議が終わったあと、自分がどれくらい聞き取れていたかをこっそり数えると、私の数字はいつもこのあたりを行ったり来たりしていた。営業事務で27歳、英語を5年後回しにしてきた私にとって、海外の取引先とのオンライン会議は毎回こわかった。相手が早口で2分話すと、はっきり分かるのは最初のひと言くらいで、あとはうなずきながら音が流れていくのを見送るだけだった。ここでは、リスニングを何ヶ月もかけて鍛える話はしない。聞き取れないままでも来週の会議で詰まらなくなるために、私がやめたことと、会議の前と後に足した準備を、順番にそのまま書いていく。同じように会議のたびに息をひそめている人へ、今週から使える形で渡したい。
会議のあとに聞き取れた割合を数えたら、いつも3割前後だった
3割、5割、また3割。数えて見えた自分のばらつき
英語の会議が苦手だと感じている間、私は「全然聞き取れない」という気分だけで自分を採点していた。あるとき、会議のあとに聞き取れたところと聞き取れなかったところを紙に分けて、ざっくり割合を出してみた。金曜の朝のシンガポール取引先との定例は3割、資料を事前に読んでいた火曜の打ち合わせは5割、初対面の相手が入った会議はまた3割。数字にしてみると、日によって2割も差があって、しかもいちばん低いのは準備なしで臨んだ日だった。全然だめだという気分は、実際には3割から5割の幅の話だった。ここが分かっただけで、次に上げるべきは準備のある日の再現なのだと見えてきた。まず自分の会議が今どのあたりにあるのかを知ると、こわさの正体が少しだけ小さくなる。
私が詰まっていたのは、聞き取れないことより聞き返せないことだった
割合を数えて意外だったのは、詰まる瞬間が「聞き取れなかったその時」ではなかったことだ。聞き取れないところはどうせ出る。本当に苦しいのは、聞き取れなかった1文のせいで、そのあと何を聞かれているのか分からなくなり、返事もできず黙ってしまう場面だった。1文の取りこぼしが、会議の残り10分をまるごと道連れにする。逆に言えば、取りこぼした1文をあとで拾えるなら、その場で固まらずに済む。私の詰まりは英語力そのものより、聞き逃した瞬間にリカバリーの手がないことから来ていた。だとしたら、鍛えるより先に、聞き逃してもいい仕組みを持つほうが早い。
具体策:会議が終わった直後に、聞き取れた割合を1回だけ数える
やることは1つだけでいい。次の英語会議が終わったら、その直後に「今日は何割くらい聞き取れたか」を10秒で数字にして、スマホのメモに残す。0割、3割、5割、と刻みは粗くていい。1週間分たまると、準備した日と丸腰の日で自分の数字がどれくらい動くかが見える。私は最初の1週間で、3割・5割・3割・6割と並んで、5割を超えた日はどれも会議前に資料を読んでいた日だった。感覚で「全部だめ」と落ち込むより、数字で「準備した日は上がる」と分かるほうが、次の一手につながる。まず数える、それだけで今週の会議は少し変わる。
「リスニングを鍛えろ」は、来週の会議には間に合わなかった
シャドーイングもディクテーションも、効いてくるのは数ヶ月先だった
英語の会議が聞き取れないと検索すると、出てくる答えの多くはリスニングの勉強法だ。シャドーイングをしなさい、ディクテーションで音の変化に慣れなさい、と。どれも間違ってはいないし、私も夜に少しずつ続けている。ただ困ったのは、これらが効いてくるのに数ヶ月かかることだった。会議は今週も来週も来る。今日の私が明日の会議で聞き取れるようになる方法として、シャドーイングは間に合わない。勉強はゆっくり効く長期の薬で、明日の会議に必要なのは、その場をしのぐ応急の手当てだった。この2つを同じ箱に入れていたから、勉強しても会議は変わらないと落ち込んでいたのだと気づいた。
具体策:長期の勉強と、今週の会議対策を、別の引き出しに分ける
私がやったのは、頭の中で2つの引き出しを分けることだった。1つは「半年後の自分のためのリスニング練習」。もう1つは「明日の会議を乗り切るための準備と後始末」。前者は夜に10分でいいから続ける、後者は会議のたびに毎回やる、と役割をはっきり分けた。分けてから、勉強が進まない週でも会議対策だけは回せるようになった。学習の成果が出るまでの数ヶ月、会議を無防備に迎えなくて済む。勉強をやめる必要はない。今週の会議は別の手で守りながら、長期の練習はその裏で静かに積んでいけばいい。ここから先は、その会議専用の引き出しに入れた準備の話をする。
聞き取れない前提で、会議の前にやる3分の準備
アジェンダと参加者の名前を、声に出して先に読む
会議前3分でいちばん効いたのは、送られてきたアジェンダと参加者リストを、声に出して1回読むことだった。目で追うだけで終わらせず、口を動かして読む。人の名前や議題のキーワードを一度自分の口で言っておくと、会議中に同じ単語が飛んできたときに耳が引っかかる。初対面の相手の名前は、聞き取れないと返事の宛先すら分からなくなるので、先に音で入れておくと安心が段違いだった。3割だった初対面の会議が、名前を先に読んだだけで4割まで上がった日があった。準備ゼロで5割、名前を入れて上がるなら、この3分は時給に換算しても悪くない投資になる。読むだけなので、英語が苦手でも今日からできる。
数字と固有名詞だけ、先に紙に書き出しておく
会議でいちばん取りこぼすと痛いのは、日付、金額、数量、そして社名や製品名だった。ここを聞き逃すと、営業事務の仕事では後の処理がまるごと狂う。だから会議前に、その日話題になりそうな数字と固有名詞を、分かる範囲で紙に書き出しておくことにした。先週の金額、今月の締め日、相手の会社名と担当者名。書いておくと、会議中は「新しく出た数字」だけに集中できる。全部を等しく聞こうとすると全部が流れていくが、拾う対象を数字と名前に絞ると、そこだけは網に残る。聞き取る量を減らして、大事な一点の精度を上げるやり方だ。
具体策:会議前3分でやることを3つに絞る
準備を欲張ると続かないので、会議前にやることは3つだけに固定した。1つ、アジェンダと参加者名を声に出して1回読む。2つ、想定される数字と固有名詞を紙に書く。3つ、自分が発言する可能性のある1文だけ、英語で用意しておく。この3つで、私の会議前ルーティンは3分で終わる。3分を惜しんで丸腰で入る日と、3分使って入る日を数字で比べたら、私の聞き取り率は平均で2割ほど違った。3分で2割戻るなら、朝のコーヒーを1口遅らせる価値はある。準備は増やすほど効くわけではない。毎回必ず回せる小ささにするほど効いた。
聞き取れなかった分を、会議の後に取り戻す形にした
その場で全部を捕まえようとするのを、いったんやめた
前の準備をしても、聞き取れないところはやっぱり出る。長いあいだ私は、それをその場で100%捕まえようとして力み、力むほど固まっていた。あるとき考え方を変えて、会議中は7割だけ聞ければいい、残りは後で拾えばいいと割り切ることにした。1回きりで消えていく音を、その場で完璧に受け止めようとするから苦しい。もう一度聞ける形さえ用意しておけば、会議中の私は肩の力を抜いて、聞けるところに集中できる。取りこぼしを許すには、取りこぼしを後で拾う手段が要る。そこで私に必要になったのは、英語力を上げる教材ではなかった。聞き取れなかった1文を会議のあとに文字で読み直せる道具だった。
録音した会議を、無料の文字起こしにかけて確認してみた
同僚に教えてもらって、Nottaという文字起こしアプリの無料の範囲を試した。私が使ったのはフリープランで、2026年8月7日時点の公式情報では月120分まで、期間の制限なくずっと無料で使える。録音した会議の音声を読み込ませると、話された英語がそのまま文字になって出てくるので、聞き取れなかった1文を目で追い直せた。耳で1回流れて消えた英語が、文字なら止めて、戻して、辞書を引きながら読める。ZoomやTeamsの会議をその場で文字にすることもできるが、私は会議中は聞くことに集中して、確認は終わったあとに回す使い方が合っていた。有料のプレミアムプランは2026年8月7日時点で月1,980円(税込)、年払いなら14,220円で月あたり約1,185円、文字起こしは月30時間まで使える。私のように週1回30分の英語会議しか録らないなら月およそ120分で、無料の範囲にちょうど収まった。毎日1時間の英語会議がある人は月20時間を超えるので、そこで初めて有料の30時間が要る計算になる。高いか安いかは月額だけでは決まらない。自分が月に何分の英語会議を文字に戻したいかで、無料で足りるか有料が要るかが変わる。
合わない人と、先に知っておきたい注意点
良いところだけ書いても選ぶ材料にならないので、注意点を先に置く。まず大前提として、これは英語が聞き取れるようになる道具ではない。会議中に自分の耳が育つわけではないので、長い目でのリスニング練習は別に続ける前提で使う。聞き逃しを後から拾う網であって、英語力を上げる先生ではない。次に、会議を録音するときは必ず相手の許可を取る。黙って録るのは相手にもルールにも反するので、社外の相手なら一言ことわる。それから、自動の文字起こしは万能ではない。なまりの強い英語や専門用語、固有名詞は誤変換することがある。数字や社名は自分の目で確かめ直す前提で使うといい。リアルタイムの文字を追いながら会議に参加するのは、慣れないうちは逆に気が散る人もいる。私は会議中に画面の文字を見るのはやめて、確認は後回しにしたほうが集中できた。英語から日本語への翻訳や要約は2026年8月7日時点でプレミアム以上の機能なので、無料の範囲でできるのは文字起こしが中心だと分かって使い始めるのがいい。
「聞き取り率」より「取り戻せた率」で自分を見ることにした
次に見る場所は、会議中の理解度ではなく、会議後に確認できる割合
準備と後始末を回すうちに、自分を測る場所が変わった。前は「会議中に何割聞き取れたか」だけで落ち込んでいた。今は、聞き取れなかった分を会議のあとにどれだけ拾い直せたか、という取り戻せた率のほうを見ている。会議中は3割でも、録音とメモで残り7割のうち大事なところを後で確認できたら、仕事としては困らない。だから次に英語会議のやり方を選ぶときは、自分が本番で完璧に理解できるかを気にするより先に、聞き逃しても後から取り戻せる仕組みが前後にあるかを見るようにしている。会議中の理解度は一発勝負だが、取り戻せる率は準備で上げられる。ここを見る場所に変えただけで、会議の前の胃の重さがずいぶん減った。
今週の、最初の一手
だから今週やることは1つだけにする。次にある英語の会議を1本だけ、相手の許可を取って録音して、終わったあとにNottaの無料の文字起こしにかけて、聞き取れなかった1文を目で読み直す。それだけでいい。特定のスコアや英語力の向上を約束するものではないし、聞き取れるようになる速さは人によって違う。それでも、聞き逃した1文を後から必ず拾える状態を作っておくと、会議中に固まる回数が減り、固まらなくなると、不思議と本番の聞き取りも少しずつ落ち着いてくる。英語を5年後回しにしてきた私が、30歳になる前に会議のたびの息苦しさを手放せた入口は、リスニングを完璧にすることではなく、聞き取れないままでも大丈夫な準備を1つ持つことだった。次の会議で黙り込む前に、まずは録音ボタンと、終わったあとの5分から始めればいい。
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