単語帳を数ページで閉じてきた27歳が、口に出して初めて気づく「何から」の答え

海外留学・ワーホリ

木曜の夜22時半、コンビニで買った春巻きをレンジに入れて、待っている30秒のあいだにスマホを開いた。検索履歴に「英語 やり直し 何から」が並んでいる。3日前にも、先週も、先月も同じ言葉を打ち込んでいた。開いた記事の1本目にはこう書いてあった。まず中学英語の単語からやり直しましょう、と。私は春巻きを皿に移しながら、また同じ結末が見えた気がして、そっと画面を閉じた。単語帳なら本棚に3冊ある。どれも最初の20ページくらいで止まっている。

この記事は、私みたいに「まず単語から」を握って本屋に行き、また1冊増やして、また止まってきた人に向けて書いている。上位の答えがなぜ届かないのかを1つずつ確かめて、最後に、今夜そのまま踏める一手を置く。


「まず中学英語の単語から」が、続かない人にとっていちばん危ない出発点になる理由

やり直しの記事を10本くらい続けて開くと、どれも似た順番で答えを渡してくる。中学英語の復習から入り、単語を固め、文法を確認し、それから話す練習へ。もっともらしいし、実際に正しい。中学の文法と単語が抜けたまま英会話をやっても土台が崩れるのは、その通りだと思う。

ただ、この順番には一つ、誰も口にしない前提が埋まっている。単語も文法も、机に向かって1人で黙って覚える作業だという前提だ。ページを開いて、赤シートで隠して、正解を頭の中で確かめる。合っていても誰も褒めないし、間違えても誰も直さない。返ってくる反応がゼロの練習を、いちばん最初に置いている。

反応が返らない作業を毎晩1人で続けられる人は、そもそもこの検索をしない

私が単語帳を20ページで閉じたのは、覚えられなかったからじゃない。20ページ目まではちゃんと進んだ。gorgeousもfascinatingも、その晩は言えた。問題は次の日だ。前の晩に覚えたはずの単語を思い出そうとして、半分も出てこない。誰かに「昨日のあれ、覚えてる?」と聞かれるわけでもないから、抜けたことにさえ気づかない。手応えがない作業は、進んでいるのか止まっているのか自分でも分からなくなる。分からなくなると、開かなくなる。

営業事務の1日を終えて、22時に帰宅して、それから赤シートと向き合う元気が毎晩湧く人は、たぶんこの検索をしていない。私みたいに帰りの電車ですでに疲れきっている人間に、いちばん反応の薄い作業を最初に渡すのは、走り出しでいちばん急な坂を登らせるのに近い。

「基礎ができてから話す」の順番が、私を5年止めてきた

基礎を固めてから話す。この順番を、私はずっと守ってきたつもりだった。守ってきたというより、守っている「つもり」で5年を過ごした。単語がまだ足りないから、まだ話す段階じゃない。文法が怪しいから、もう少し固めてから。そうやって「話す」を先送りにするための理由を、単語帳がくれていた。

27歳になった今、その5年を振り返ると、私は基礎を固めていたんじゃなくて、話さずに済む言い訳を毎晩補充していただけだった。単語帳を買うたびに「今度こそ準備している」という感覚が得られる。その感覚が心地よくて、実際には1歩も話せるようになっていないことから目をそらせた。順番を守ることが、動かないことの隠れ蓑になっていた。


「目的をはっきりさせろ」で走り出せなかった、私の3月の話

今年の3月、私はノートを1冊おろした。やり直し記事の多くが「まず目的を決めろ」と書いていたからだ。英語が話せてどうなりたいのか、それが決まれば道は決まる、と。私は真面目にそれをやった。カフェで2時間、ミルクティーを飲みながらノートに書いた。

「30歳までにワーホリでオーストラリアに行く」「現地のカフェで働けるくらいの英語」「旅先で自分から人に話しかけられる自分」。書き出したら止まらなかった。ページが目的で埋まって、私はすっかり満足して家に帰った。そして次の日、その満足感を胸に、また単語帳を開いた。3ページで手が止まった。

目的は、スイッチを入れてはくれるけど、燃料にはならなかった

あのノートは無駄じゃなかった。目的を書いたおかげで「やろう」という気持ちには火がついた。ただ、その火は3日で消えた。目的は始めるきっかけをくれるけれど、毎晩机に向かい続ける力とは別物だったんだと、あとで気づいた。

ワーホリに行きたいという気持ちは、木曜の夜22時に単語帳を開く1回目までは私を運んでくれる。でも2回目、3回目、10回目と、同じ反応の薄い作業を繰り返すエネルギーは、目的からは出てこない。「オーストラリアのカフェで働きたい」と「今夜も英単語を50個覚える」のあいだには、想像以上に距離がある。その距離を、目的だけでは埋められなかった。

止まらなかった人を思い出すと、目的が明確だったからじゃなかった

学生時代、英語がぐんぐん伸びた友達が1人いた。彼女に何が良かったのか聞いたら「留学生の友達ができて、毎週しゃべってたら勝手に話せるようになった」と言われた。目的なんて特になかったらしい。ただ、しゃべると相手が笑ったり首をかしげたりする。その反応が面白くて、次も会いたくなる。次に会うから、その場で通じなかった言い方を家で調べる。反応が次の行動を引っ張っていた。

私に足りなかったのは、立派な目的じゃなかった。口から何かを出して、それに対して何かが返ってくる、その最小の一往復だった。目的をどれだけ精密に書いても、この一往復が毎晩の練習に組み込まれていなければ、私はまた3ページで止まる。


「30歳でも遅くない」は、私がいちばん怖いことに一言も触れていない

やり直し記事は、たいてい最後のほうで年齢の不安を打ち消しにかかる。30代でも遅くない、大人は理屈で理解できるから有利だ、30歳から始めて通訳になった人もいる、と。読むたびに少しだけ安心する。でも、その安心は5分ももたない。

私が本当に怖いのは、30歳という年齢が遅いかどうかじゃない。今からでも間に合うことくらい、頭では分かっている。怖いのは、また3ページで閉じる自分だ。過去5年で何度も「今度こそ」と思って始めては、途中で消えてきた。その私が、あと何回「今度こそ」を使えるのか。使い切ったとき、私は英語を諦めた27歳のままオーストラリアの話をしなくなるんじゃないか。触れてほしいのはそこなのに、記事は「遅くないですよ」で優しく通り過ぎていく。

「遅くない」より、「途中でやめない自分になれるか」を知りたかった

年齢の心配を消してもらっても、私が繰り返してきた脱落のパターンは何も変わらない。始める、止まる、また来月へ送る。この輪から出られる保証がないまま「遅くないよ」と背中を押されても、押された先でまた同じ壁にぶつかるだけだ。

だから私が確かめたい問いは、こう言い換えられる。単語帳を3ページで閉じてきた私が、今度の一歩目でも同じように消えていくのか、それとも今回は続くのか。この問いに答えるには、私の脱落がどこで起きるかを見なきゃいけない。そして私の脱落は、いつも「反応が返ってこない練習を1人で続けられなかった地点」で起きていた。

ワーホリのタイムリミットが、逆に私を動けなくしていた

30歳という締め切りは、本来なら私を走らせる材料のはずだった。ところが実際には逆に働くことが多かった。3年しかない、と思うと、失敗が怖くなる。失敗するくらいなら、ちゃんと準備してから始めたい。そう考えて、また単語帳という「準備」に戻る。締め切りへの焦りが、話す一歩を遠ざけていた。

この悪循環を切るには、締め切りの手前で「小さく話して、小さく返ってくる」経験を積むしかない。完璧に準備してから話すのではなく、下手なまま口に出して、返ってきた反応で軌道を直す。準備を完成させてから、ではもう間に合わない年齢に、私は近づいている。


「発音は独学アプリで矯正」を3日でやめた、あの2週間で分かったこと

去年の秋、発音矯正のアプリを入れた。上位記事が「発音は最初のうちに固めておくと後がラク」と口をそろえていたからだ。マイクに向かって発音すると、判定が出る。thの音が甘い、rが巻きすぎ、といった具合に。理屈としては反応が返るはずだった。なのに3日でやめた。

なぜやめたか、少し時間が経って分かった。アプリの判定は「正しいか間違いか」しか返してこない。バツが出ても、じゃあどう舌を置けばいいのか、私には分からない。1人で同じ単語を10回言い直しても、10回ともバツが出る。返ってくるのは反応というより、ダメ出しの繰り返しだった。しかも相手は機械だから、私がへこんでいることには気づかない。誰にも見られていない部屋で、機械にバツをもらい続ける夜を3日で終えたのは、意志が弱いからじゃなかったと今は思う。

発音は、直してくれる相手がいて初めて手応えになる

あのとき本当に必要だったのは、判定のバツじゃなくて「そこ、もう少し舌を上に」という具体的な直しの一言だった。人が耳で聞いて、その場で「今のは良かった」「今のは口をもっと横に」と返してくれる。そこで初めて、私の口の動きが変わって、次に言い直したときに「さっきより通じた」という感覚が返ってくる。この一往復があれば、私は3日で消えなかった気がする。

もし発音の手応えを1人きりの判定でなく、直してもらえる形で得たいなら、発音に絞って見てくれるサービスを一度試すのが早い。私が3日でやめたアプリと違って、どこをどう変えればいいかが返ってくるかどうかで、続くかどうかが変わる。→ speek(英語発音矯正)の無料トライアルを見る

「1人で完結する練習」ほど、私は早く脱落してきた

ここまで並べてきた私の脱落を見返すと、共通点が1つある。単語帳、発音アプリ、どちらも1人で完結する練習だった。開始した日は元気だけど、返ってくる反応が薄いか、あってもダメ出しだけだから、3日で燃料が切れる。逆に、学生時代に留学生の友達としゃべっていた期間だけは続いた。人が相手だと、通じた瞬間の嬉しさが次の日を引っ張ってくれた。

私が「続かない人間」なんじゃなくて、続けられる形の練習に一度も出会っていなかっただけかもしれない。この見方に立つと、やり直しの一歩目に置くべきものが変わってくる。


「何から」の答えは、覚える作業の前に「口に出して返ってくる一往復」だった

ここまで解いてきて、私なりの答えが見えた。やり直しの一歩目に置くべきは、単語でも文法でも目的のノートでもない。口から英語を出して、相手から何かが返ってくる最小の一往復だ。それが返ってくると、私は次の日も続けたくなる。続けば、単語も文法も後から自然に必要になって、そのとき初めて単語帳が意味を持つ。

順番が逆だったんだと思う。単語を固めてから話す、ではなく、まず下手なまま話して、通じなかった言葉を家で調べる。この順番なら、単語帳は「反応のあった練習の続き」になる。反応があった単語は、次の日も覚えている。3月のノートに書いた目的も、この一往復とつながって初めて燃料に変わる。

25分の会話1回で、私の単語帳の使い方が変わる

具体的にどうするか。オンライン英会話の無料体験を1回だけ受けてみる。25分、相手はプロの先生で、こちらが黙っても待ってくれるし、詰まったらヒントをくれる。私が「I want to go to Australia」と言えば、先生は「Oh, when do you want to go?」と返してくる。この返ってくる感覚こそ、単語帳にも発音アプリにもなかったものだ。

その25分のあいだに、言いたかったけど出てこなかった言葉が3つか4つ出てくる。「働く」を英語で何と言うんだっけ、と詰まる。その詰まった単語だけを、家に帰ってから調べる。すると不思議なことに、その単語は次の日も覚えている。使いたかった瞬間があるからだ。単語帳を頭から順に埋める作業と、通じなかった1語を後から埋める作業は、同じ暗記でも定着がまるで違う。

まず反応が返る一往復を体験してみたいなら、無料体験から入るのがいちばん軽い。教材も予習もいらないから、木曜の夜に単語帳を開くよりハードルが低い。→ DMM英会話のオンライン無料体験レッスンを受けてみる

今夜そのまま踏める、私が決めた一手

本棚の単語帳を4冊目にする前に、今夜やることを1つだけ決めた。無料体験を1回、予約する。それだけ。単語を100個覚えてから、じゃない。文法を復習してから、でもない。準備ゼロのまま、25分の会話に飛び込む。下手でいい。通じなくていい。返ってくる一往復を、私の体で確かめる。

もし発音がどうしても気になって口が動かないなら、その手前で発音を短期間だけ人に見てもらってから会話に行く手もある。順番はどちらでもいい。共通しているのは、1人で黙って赤シートをめくる夜を、今夜で終わらせることだ。

過去5年、私は「まず単語から」を握って毎回同じ場所で止まってきた。その握り方を変える。まず口を開けて、返ってくる何かを受け取る。そこから始めれば、続かなかった私が、初めて2日目にたどり着けるかもしれない。春巻きが冷めないうちに、今夜、体験の予約だけ取る。単語帳は、それが通じなかった夜に、初めて開けばいい。


27歳の私に残された時間で、いちばんもったいないのは、また来月へ送ることだ。順番を完璧にしてから、なんて言っていたら30歳が来る。だから今夜は、正しさより手応えを取る。口に出して、返ってくる。その1回を、私はやっと自分に許す。


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