TOEIC400で十分という安心が、1年後に話せないまま帰る理由になっている

英語学習法

3回受けたTOEICのスコアだけ並べても、話せなさは1ミリも動かなかった

私の手元に、TOEICの結果票が3枚ある。2022年11月が385点、2023年6月が420点、2024年2月が465点。数字だけ見れば、ゆっくりだけど上がっている。上がっているのに、去年の年末、会社に来た海外拠点の担当者に話しかけられて、私は「Yes」と「Sorry」しか口から出せなかった。相手が笑顔で待ってくれている数秒が、地獄みたいに長かった。

その夜、家に帰って結果票を3枚並べてみた。385、420、465。80点上がっている。なのに私は、会議室の外でエレベーターを待つあいだの雑談ひとつ、成立させられなかった。この記録を残そうと思ったのは、そのギャップが怖かったからだ。スコアが上がっても話せるようにならない理由を、自分の失敗シーンごと書いておかないと、また来月「TOEICもう少し上げてから」と言って先延ばしにする。それを何回繰り返してきたか、もう自分でも数えられない。

ワーホリに行きたいと言い続けて27歳になった。30歳のタイムリミットまで3年を切っている。「TOEIC400あれば十分」という言葉を信じて、私はスコアを上げることに逃げてきた。465点まで来て、それが何の役にも立たない場面を目の前で味わって、ようやく気づき始めている。私が測っていた数字は、話せるかどうかとは別の場所にあった。


385点だった11月、私は英語のフレーズを1つも声に出していなかった

リスニングの点は上がったのに、口は1度も動かしていない

最初の385点を取ったのは、通勤電車でTOEICのアプリを毎朝25分やっていた時期だった。Part2の短い応答問題が好きで、正解の選択肢を選ぶのが気持ちよかった。イヤホンから流れる英語を聞いて、A・B・Cのどれかをタップする。この動作を、片道25分×往復で1日50分、平日ずっと続けていた。

3か月続けて、リスニングのスコアは確かに上がった。でも思い返すと、私はその3か月、英語を1度も声に出していない。全部、耳で聞いてタップするだけだった。口は完全に眠っていた。聞き取れる音と、自分の口から出せる音は、まったく別の筋肉を使う。当時の私はそれを知らなくて、リスニングが伸びれば話す力も一緒に伸びていくものだと勝手に思っていた。

「音を聞いてタップする」練習を何100回やっても、口の筋肉は育たない

選択肢を選ぶ練習は、正解が画面に用意されている。3つの中から1つ選べばいい。ところが実際の会話に選択肢は出てこない。相手が「週末どうだった?」と聞いてきたとき、A・B・Cは表示されない。ゼロから自分で文を組み立てて、声帯を震わせて、口を動かして音にする。この最後の「音にする」部分を、私は385点の3か月でまったく訓練していなかった。

だから海外担当者に話しかけられたとき、頭では「休みは京都に行きました」くらい言えるはずだったのに、口がそれを音に変換できなかった。knowのkとかthankのthとか、日本語にない音の出し方を1度も練習していないから、いざとなると喉が固まる。私はこの経験で、発音矯正のアプリをようやく真剣に探し始めた。speekという発音に特化したサービスを見つけて、日本人がつまずく音を1つずつ直していく作りだと知って、耳で選ぶだけの練習との違いにやっと気づいた。→ speek(英語発音矯正)の無料トライアルを見る


420点になった6月、単語を覚えるほど口が重くなるという逆転が起きた

知っている単語が増えたのに、とっさに出るのはむしろ減った

2023年の春、私は単語帳を買い直した。385から420に上げるために、TOEIC頻出の単語を800語くらい詰め込んだ時期だ。単語カードのアプリで、日本語を見て英語を答える。この形式で毎晩50語ずつ回していた。テストの点は上がった。読解のスコアが特に伸びた。

ところが、この時期に妙なことが起きた。会社の給湯室で、たまたま英語ができる同僚と英語で少し話そうとしたとき、以前より言葉に詰まるようになったのだ。頭の中に単語がたくさん浮かんでいるのに、そのどれを使えばいいか選べなくて、選んでいるあいだに会話が次に進んでしまう。覚えた単語が増えたぶん、選択肢が増えて、かえって出てこなくなった。

「日本語→英語」の翻訳回路を鍛えていたことに、あとで気づいた

単語カードは「日本語を見て英語を答える」形式だった。私はこれを50語×毎晩、たぶん半年で1万回くらい繰り返した。1万回繰り返したのは、頭の中で日本語を英語に変換する作業だ。会話のたびに、まず日本語で文を作って、それを1語ずつ英語に訳して、並べ替えて、発音する。この工程を挟むから、返事が3秒遅れる。3秒あれば、相手はもう次の話題に移っている。

言いたいことを日本語で組み立ててから訳すやり方では、会話のスピードにどうしても間に合わない。この壁にぶつかって、私は第二言語習得の理論をベースにしたトレーニングを探した。スパトレは、覚えた知識を実際に使える状態に持っていく訓練を組み込んでいて、翻訳を挟まずに英語のまま反応する練習ができると知って、単語を溜め込むだけの独学との差が見えた。→ スパトレ(第二言語習得論ベースの英語トレーニング)の7日間無料体験を見る

知識が増えることと、その知識をとっさに引き出せることは、育て方がまるで違う。私は420点の半年で、引き出す訓練をゼロ時間しかやっていなかった。倉庫にどれだけ在庫を積んでも、レジで会計できなければ意味がない。私の英語は在庫だけが山積みの倉庫だった。


465点の2月、海外担当者との数秒で「点数の外側」を見せられた

YesとSorryしか出なかった30秒を、そのまま書いておく

去年の12月、海外拠点から来た担当の人が、私のデスクの近くで書類を探していた。目が合って、その人が英語で「これ、どこにあるか分かる?」みたいなことを言った。私が探しているのはこの部署の書類だ、くらいの内容だったと思う。465点の私は、その質問を耳で7割は理解できた。理解できたのに、答えが1文字も出なかった。

「Yes」と言った。何がYesなのか自分でも分からない。相手が不思議そうな顔をして、もう1度ゆっくり言い直してくれた。私は「Sorry」と言った。それで会話は終わった。相手は別の人のところに歩いて行った。私は自分の席で顔が熱くなって、しばらく画面を見つめていた。465点。3回受けて一番いい点。その点が、目の前の30秒でまったく機能しなかった。

聞き取れることと、返せることの間には深い溝がある

この日はっきりしたのは、私のリスニング力と発話力の差だった。質問は理解できた。それは385点からの練習で耳が育ったからだ。でも返せなかった。返す練習を、この2年間で1秒もしていなかったからだ。理解と発話のあいだには溝がある。私はずっと片側の岸だけを高く積み上げて、反対の岸には土を1つも盛っていなかった。

TOEICは、この溝を測らない。TOEICで測れるのは、聞いて選ぶ力と読んで選ぶ力だ。話す力は試験項目に入っていない。だから私が465点まで上げても、話す力の数字はずっとゼロのまま放置されていた。「TOEIC400で十分」という言葉が指しているのは、この選んで答える力のことで、口から音を出す力のことではなかった。私はこの2つを、ずっと同じものだと勘違いしていた。


3回分の記録から見えた、スコアと話す力がつながらない仕組み

私が積んだ時間は、全部「入力」だった

385点も420点も465点も、私がやっていたのは英語を頭に入れる作業だった。聞く、読む、覚える。全部インプットだ。話すのは英語を外に出すアウトプットで、これは1度もやっていない。ワーホリで求められるのは、外に出す力だ。カフェで注文する、シェアハウスのルームメイトと話す、バイトの面接に答える。全部アウトプット。私は入れる練習だけを2年やって、出す本番に行こうとしていた。

プールに例えるなら、私は毎日プールの水を眺めて泳ぎ方の本を読んでいた。水温も知っているし、クロールのフォームも図で覚えた。でも1度も水に入っていない。この状態で海に飛び込んだら溺れる。私が会議室の外で溺れたのは、当然だった。

「点数が上がる=話せるに近づく」という誤解が先延ばしを生む

この誤解が怖いのは、努力している実感を与えてくれるところだ。TOEICの点が上がると、確かに前に進んでいる気がする。385から465まで来て、私は「順調に力がついている」と思っていた。だから「もう少し点を上げてから渡航しよう」と、渡航を来月に、また来月に送り続けられた。数字が上がるたびに、私は安心して先延ばしの言い訳を1枚ずつ増やしていた。

もし私が最初から「話す練習を1時間もしていない」という事実を数字で見ていたら、たぶん先延ばしできなかった。でもTOEICはその数字を出さない。話す力ゼロのまま、選ぶ力だけが465まで育つ。この見えなさが、私を2年間その場に留めた。ワーホリ経験者が書いた「1年いたけど結局話せなかった」というnoteに、私が何度も手を止めてきたのは、その人も同じ罠にはまっていたからだと今なら分かる。行く前に話す力を育てないと、現地の1年もインプットだけで終わる。


465点の私が、渡航前の残り時間で数字を作り直すためにやっていること

測るものを「選ぶ力」から「口から出る力」に切り替える

今の私は、TOEICの点を追うのをいったん止めている。代わりに記録しているのは、1日に英語を声に出した分数だ。2月から始めて、最初の週は1日平均4分だった。それでも、ゼロだった2年間に比べれば革命的な変化だ。今は1日20分を目標にしている。数字を「465点」から「今日20分声に出した」に置き換えると、進んでいる感覚が全部アウトプット側に移る。

声に出すといっても、いきなり誰かと話すのは無理だった。だから最初は、発音矯正で1つの音を10回ずつ発音するところから始めた。thの音、rとlの違い、母音の作り方。この基礎の音を口に馴染ませないと、いくら文を組み立てても相手に通じない。基礎の音を10日くらい続けたら、少しずつ喉の固まりが取れてきた。

翻訳を挟まずに反応する練習を、渡航前に前倒しする

単語帳で溜め込んだ在庫を、レジで使える状態にする練習も並行して始めた。日本語を経由せずに、相手の質問に英語のまま反応する。この訓練は独学だと相手がいないので難しくて、理論に基づいたトレーニングの型を借りることにした。第二言語習得の研究では、覚えた知識を使える技能に変えるには、意味のあるやりとりの中で繰り返し使う工程が要ると分かっている。私はこの工程を、渡航前の今のうちに詰め込んでおきたい。

現地に着いてから話す練習を始めるのでは遅い。最初の2週間で「英語を避ける癖」がついてしまう。カフェで注文が通じなかった1回目の恥ずかしさで、次からメニューを指差しで済ませるようになる。その積み重ねが、1年後に話せないまま帰る道になる。だから最初の恥ずかしい失敗を、日本にいる今のうちに全部済ませておく。トレーニングの中で何10回も詰まって、何10回も直して、渡航の飛行機に乗るときには「もう詰まり慣れた」状態にしておきたい。

出口の自分を先に決めてから、逆算して今日の20分を積む

私が3年後に立っていたい場所は、はっきりしている。ワーホリから帰ってきて、あの海外担当者みたいな人に話しかけられたとき、笑顔で30秒会話を続けられる自分だ。この出口を先に決めると、今日やるべき20分の中身が決まる。選ぶ練習はもう十分にやった。465点分の在庫はある。あとはそれを口から出す訓練を、帰国時の自分から逆算して積むだけだ。

3枚の結果票を並べて分かったのは、私は数字を上げることで安心を買っていたということだった。385、420、465。上がるたびに、話せない現実から目を逸らせた。今はその結果票を引き出しにしまって、代わりにスマホのメモに「今日声に出した分数」を毎晩書いている。この記録が3か月分たまるころには、給湯室の同僚くらいなら、詰まらずに雑談を返せる自分になっていたい。渡航の申し込みボタンを押すのは、そのメモが90日分たまった日だと決めた。今夜の20分が、その1日目だ。


スコアは、話せる自分を保証してくれなかった。私が2年かけて学んだのは、この1点に尽きる。点を上げる時間があるなら、その一部を口を動かす時間に回すべきだった。465点まで来て遠回りしたけれど、遠回りしたぶん、何を測ればいいかは分かった。今日から測るのは、点数ではない。私の口が、英語をどれだけ音にできたかだ。


▶ さくらが確かめた・次の一手(すべて無料)

→ ネイティブキャンプ留学で留学費用の無料見積もりを取る

→ 留学情報館で無料カウンセリングを申し込む

※本記事にはアフィリエイトリンクが含まれます(PR)

コメント

タイトルとURLをコピーしました