TOEIC 600点から伸びない社会人が、2年の停滞を抜けた勉強の作り直し方

英語学習法

スコアシートを3枚並べて、動いていない数字と目が合った

会社の給湯室で、団体受験の結果が入った封筒を開けたのが去年の11月だった。590点。1枚目のスコアシートを撮った写真がスマホに残っていて、日付は2年前の10月になっている。625点。2枚目が去年の6月で610点。指を滑らせて3枚を並べると、上下に35点動いただけで、平均すれば600点ちょうどのラインを2年間なぞっていた。

その場でしばらく動けなかった。参考書は買い替えていた。模試アプリも課金していた。通勤電車でイヤホンをして音声を流していた。やっていないわけじゃない。それなのに数字が固まっている。むしろ最初の625点が2年で一番高いという事実が、いちばんこたえた。努力の量と結果が、私の中でつながらなくなっていた。

この記事は、その封筒を開けた11月から、次の受験までの4か月で私が実際にやったことの記録になる。何を測って、どこでつまずいて、どの週にスコアの内訳が動き始めたのか。うまくいった話だけをきれいに並べても意味がないので、失敗した週もそのまま書く。同じ600点で足踏みしている人が、自分の何を疑えばいいかの手がかりになればと思って書いている。

内訳を分解したら、伸びていたパートと落ちていたパートが逆だった

3枚のスコアシートを机に広げて、リスニングとリーディングの内訳を書き出した。エクセルに打ち込んで初めて気づいたことがある。私はずっと「リーディングが弱い」と思い込んでいたのに、実際に落ちていたのはリスニングのほうだった。

2年前は音が聞けていた、今は聞けていない

2年前の625点のとき、リスニングは355点あった。それが去年の6月に320点まで落ちて、11月は325点。逆にリーディングは270点から285点へ、じわりと上がっていた。私が単語帳とPart7の対策に時間を注いでいた2年間、上げたつもりの読解は確かに少し伸びていて、放置していたリスニングが崩れていたのだ。

崩れた理由に心当たりはあった。2年前は英会話スクールに通っていて、週に1回は生の英語を耳に入れていた。それをやめてからは、通勤中に音声を流してはいたけれど、頭では別のことを考えていた。流し聞きの2年で、耳が確実に鈍っていた。音が「聞こえる」のと「意味が届く」のは違う段階で、私は前者で止まったまま、後者ができている気になっていた。

思い込みで弱点を1つに絞ると、対策も1つずれる

ここが一番の反省だった。内訳を見ずに「たぶんリーディング」と決めて、2年間そこに時間を投げていた。的が外れていたら、どれだけ矢を射ても当たらない。まず自分のスコアシートを開いて、リスニングとリーディングそれぞれの素点に近い数字を出してほしい。TOEICは内訳が5点刻みで返ってくるから、パートごとの正誤までは分からなくても、どちらの側が沈んでいるかは一目で分かる。

私は3枚並べて折れ線を引いた。手書きでいい。時系列で見ると、思い込みと事実がずれている箇所がはっきり見える。この作業に25分かけた夜が、4か月の起点になった。

最初の3週間、リスニングに全振りして手応えゼロだった話

弱点がリスニングだと分かったので、意気込んで音の練習に振り切った。ここで盛大に転んだので、失敗した順番のまま書く。

ディクテーションを毎晩やって、疲れただけの週

最初にやったのがディクテーション。Part3の会話を1文ずつ止めて、聞き取った英語をノートに書く。これが評判のいい練習だと知って、平日の夜22時半から始めた。仕事から帰って夕食を済ませ、眠い目をこすりながら1日20分。3週間続けた。

正直に言うと、手応えがまるでなかった。書き取れる文は最初から書き取れるし、書き取れない文は10回聞いても書き取れない。そして翌日には同じところで詰まる。ノートは埋まっていくのに、脳に何かが積み上がっている感覚がない。作業をこなす自分に安心して、聞く力が動いていない。3週間目の金曜、ノートを見返して「これ、ただ疲れてるだけだ」と気づいた。

書き取れないのは音が繋がって消えているからだった

詰まる箇所を並べてみたら、共通点があった。単語と単語がくっついて発音される部分、語尾が飲み込まれる部分で、必ず止まっている。「did you」が「ディジュ」になり、「want to」が「ワナ」になる。文字で見れば全部知っている単語なのに、音として繋がると別物になって、私の耳がそこで転ぶ。

問題は聞く量ではなかった。私は正しい音を知らないまま聞いていたから、何回聞いても知らない音は知らないままだったのだ。自分が発音できない音は聞き取れない、という話をどこかで読んだことがあって、そのときは半信半疑だったけれど、ノートの詰まりポイントがそれを証明していた。

自分の声を録って、初めて発音のズレが見えた

聞き取れない音を、まず自分の口で出せるようにする。方向を切り替えて、Part3の会話を音読して録音し、元の音声と並べて聞く練習に変えた。

録音した自分の英語が、想像より下手で笑った

初めて自分の音読を録音して再生したとき、恥ずかしくて画面を伏せた。頭の中で鳴っていた自分の英語と、実際に録れた音がまるで違う。子音が全部抜けていて、母音が日本語の母音になっている。「th」の音が「s」になり、語尾の子音が消えている。元の音声と交互に聞くと、別の言語みたいだった。

でも、これが良かった。ズレが見えたから直せる。自分の耳では、自分の発音のどこが正解からずれているのか、絶対に分からない。録音して他人の耳で聞くように聞き直すと、初めてギャップが浮かぶ。この作業を1日15分、通勤前の身支度をしながら3日続けたら、詰まっていた「ワナ」や「ディジュ」が、聞き取れる音に変わり始めた。

独学の発音矯正には限界がある、と2週間で悟った

ただ、録音を自分で聞くやり方は2週間で頭打ちになった。ズレているのは分かる。でも、正しくはどう出せばいいのかが分からない。舌をどこに置いて、息をどう抜くのか、独学だと正解の型がないまま手探りになる。自分で自分の答え合わせをしているから、間違った音を間違ったまま固めてしまう不安が消えなかった。

そこで発音そのものを見てもらえる仕組みを探して、speekを試した。録音した英語を送ると、どの音がどうずれているかを具体的に返してくれるサービスで、独学で袋小路に入っていた私の音読に、初めて外からの答え合わせが入った。「th」の舌の位置や、消えていた語尾の子音を1つずつ指摘されて、自分では一生気づけなかったズレが埋まっていった。

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発音を直し始めてから、リスニングの聞こえ方が変わった。自分の口で出せる音は、耳が先回りして拾ってくれる。ディクテーションで3週間動かなかったものが、発音を軸にした2週間で動いた。順番を間違えていたのだと、このとき腹に落ちた。

1月の受験で、リスニングが40点戻ってきた

4か月のちょうど中間、1月末に個人で申し込んだTOEICを受けた。会社の団体受験を待たずに、自分の進み具合を測りたかった。

Part3が「意味の映像」で入ってきた瞬間

試験本番のPart3で、はっきり違いを感じた瞬間があった。オフィスでの会話が流れてきて、これまでなら音を必死に追いかけて設問にたどり着く頃には内容を忘れていたのに、その日は会話が場面の映像として頭に浮かんだ。誰が誰に何を頼んでいて、相手が渋っている、という状況が絵で見えた。設問を読む前に答えが分かる問題が、何問かあった。

結果はリスニング365点。11月の325点から40点戻った。2年前の最高だった355点も超えていた。リーディングは280点で、合計645点。600点の壁に手のひらが張り付いていた2年が、1回の受験で動いた。給湯室で封筒を開けたときの、あの動けなかった感覚を思い出して、電車の中で少し泣いた。

数字が動くと、続ける理由が勝手に生まれる

この40点が何より効いたのは、やる気の面だった。それまでは「やっても動かない」という前提で机に向かっていたから、どこかで力が抜けていた。40点動いたと分かった瞬間、次はリーディングだ、と自然に前のめりになった。伸びない時期のモチベーション管理をあれこれ工夫するより、小さくても数字を1回動かすほうが早い。中間で個人受験を入れたのは、我ながら正解だった。

リーディングの停滞は、勉強法より習得の順番の問題だった

リスニングが動いたので、後半はリーディングに軸足を移した。ここでまた立ち止まる。単語帳を4周してもPart7の後半が時間切れになる癖が、どうしても抜けなかったからだ。

「知っている単語」が本番で反応しない理由

単語帳のページをめくると9割は「知っている」。でも本番のPart7で同じ単語に出会うと、意味を思い出すのに1秒かかる。1秒が1問に2回3回あって、それが54問積もると、後半の10問を塗り絵で捨てることになる。知っているのに反応しない。この時間差が、私のリーディングを縛っていた。

覚え方が悪いのか、量が足りないのか。自分ではもう判断がつかなかった。感覚だけで教材を選んでいた2年間の反省もあって、今度は言語の習得がどういう順番で進むのかを、理屈から押さえた練習をしたくなった。

第二言語習得論ベースの練習に切り替えた

そこで選んだのがスパトレだった。第二言語習得論という、言語がどう身につくかの研究をもとに教材と進め方が組まれていて、単語を「知っている」段階から「即座に使える」段階へ引き上げる練習が組み込まれている。感覚で参考書を選んできた私にとって、なぜこの順番でやるのかが説明される練習は、それだけで安心感があった。

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毎日話す機会があると、単語が使う側に回る。頭の引き出しにしまってあった単語を、自分の口で出す練習を重ねると、本番で見たときの反応速度が変わってくる。知っているだけの単語が、反応する単語に格上げされていく感覚が、1日25分の練習の中で少しずつ育った。戻り読みも減った。文を前から順に処理する癖が、話す練習の副産物として付いてきたのだと思う。

4か月を振り返って、今日から真似できる順番

ここまでの記録を、明日から動ける形に整理しておく。私が遠回りした順番を、そのまま繰り返してほしくないから、失敗した順ではなく効いた順で並べる。

まずスコアシートを3枚並べて弱点を確定する

思い込みで弱点を決めると、対策が丸ごとずれる。私がリーディングだと信じてリスニングを崩したように。過去のスコアシートを時系列で並べて、どちらの側が沈んでいるかを25分かけて出す。ここを飛ばすと、以降の努力の的が外れる。

聞く前に、自分の口で音を出せるようにする

聞き取れない音は、自分が出せない音だった。ディクテーションを何時間やっても、知らない音は知らないまま。音読を録音して、正しい音との差を埋めるほうが早い。独学で答え合わせが行き詰まったら、発音を外から見てもらう仕組みに頼っていい。私はそこで2週間の停滞を抜けた。

中間で1回、自分のお金で受けて数字を測る

団体受験を待たずに、途中で個人受験を1回はさむ。40点動いたと分かった瞬間、続ける理由が勝手に湧いてくる。伸びない時期のやる気は、精神論より1回の数字で立て直すのが早い。受験料は自己投資だと割り切った。

知っている単語を、反応する単語に変える

単語帳を周回するだけでは、本番の1秒が消えない。話す練習に単語を混ぜて、使う側に回すと反応速度が上がる。習得の順番を押さえた練習に切り替えてから、Part7の塗り絵が減った。

1月の645点から、次は会社の団体受験が5月にある。目標は700点。30歳まで、まだ時間はある。2年動かなかった数字が4か月で45点動いたのだから、順番さえ間違えなければ、この壁は越えられると今は思っている。同じ600点で止まっている人が、自分のスコアシートを3枚並べるところから始めてくれたら、この記録を書いた意味がある。


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