単語帳を3ページで閉じた私が、「事前学習しろ」で失敗する本当の理由

フィリピン・セブ留学

金曜の夜23時、ベッドの中でスマホを縦にしたまま、私はまた同じ画面をスクロールしていた。セブ島留学で失敗した人がどんな人か、その一覧を上から順に読んでいく。事前学習をしていない人、学校選びをミスした人、日本人だらけの環境に流された人、予習復習をサボった人。読み終える頃には「じゃあ逆をやればいいのか」と一瞬安心して、その2分後には胸の奥がまた重くなる。だって私は、その「逆」がいちばん続かない人間だから。

単語帳は3ページで栞を挟んだまま去年から止まっている。発音アプリは3日で通知をオフにした。TOEICの問題集はカバーだけ綺麗なまま本棚にある。27歳、営業事務、長期休暇なんて盆と正月くらいしか取れない。英語をやろうと思ってから5年が過ぎて、30歳という自分で勝手に引いた期限だけが近づいてくる。そういう私が読みたいのは「ちゃんとやれば失敗しない」ではなかった。「私みたいに続かない人間でも大丈夫なのか」だった。


失敗リストを全部並べ直すと、書いてあるのは同じ一言だけだった

5、6本の記事を横に並べて、それぞれの失敗ポイントを付箋に書き出してみたことがある。事前学習しろ、いい学校を選べ、予習復習しろ、積極的に話しかけろ、目的を明確に持て、遊びすぎるな。付箋を机に貼って眺めていたら、あることに気づいた。全部、主語が私なのだ。私がやる、私が選ぶ、私が話しかける、私が我慢する。

どの助言も、失敗を私の心がけの量に還元していた。事前学習が足りなかったのは私が怠けたから。日本人の輪に流されたのは私の意志が弱かったから。話せず帰ったのは私が積極的じゃなかったから。読めば読むほど、失敗した人=ちゃんとやらなかった人、という採点表の上に立たされる。

でも思い出してほしい。私が単語帳を3ページで閉じたのは、怠けたかったからじゃない。栞のところまで進めて、覚えた気になって、次のページを開いたら前のページの単語が1個も出てこなくて、自分が空回りしている感触だけが残ったからだ。反応が返ってこなかった。やった手応えがどこにもなかった。だから閉じた。それを「意志の弱さ」の一言で片づけられると、私はもう一生このループから出られない気がしてくる。

「ちゃんとやれ」が効かない人にだけ「ちゃんとやれ」と言う矛盾

上位記事のいちばん不思議なところは、事前学習が続かない人に向かって「事前学習をしましょう」と答えている点だ。予習復習をサボる人に「予習復習をサボらないように」と言う。積極的に話せない人に「積極的に話しましょう」と言う。私が自力で直せないと分かっている項目を、まさにその私に「直せ」と投げ返してくる。

これが刺さるのは、いちばん心当たりのある初心者だ。ちゃんとやれる人はそもそもこの記事を検索しない。読んで青ざめて、申し込みボタンの手前で止まって、また来月に送る。私が去年からずっとやっているのが、まさにこれだった。


私の単語帳が3ページで止まった本当の原因は、返事が来ないことだった

経験者アンケートで「事前学習が足りなかった」と答える人が9割を超える、という数字をよく見かける。この数字を私はしばらく「みんな準備不足で失敗するんだ、怖い」と読んでいた。ある日ふと、逆から読んでみた。9割が足りないと感じるということは、9割が続かなかったということだ。9割が続かない準備法を「もっと頑張れ」で解決できるわけがない。

私が家でやっていた事前学習を思い出す。単語をノートに書き写す。文法の解説を読む。例文を音読する。どれも1人で完結していて、正解も間違いも自分では判定できない。この発音で通じるのか、この言い回しは自然なのか、誰も教えてくれない。壁に向かってボールを投げているのに、壁が透明で、ボールが返ってきたのかどうかすら分からない。そういう作業を人間は続けられない。私が3日でアプリを閉じたのは根性がないからじゃなくて、返事のないメッセージを送り続けるのが苦しかったからだ。

出発前に欲しいのは英語力の完成品じゃなかった

セブに行く前に単語を2000個覚えなきゃ、文法を一通り終わらせなきゃ、と思うと途端に体が動かなくなる。ゴールが遠すぎて、初日で息切れする。私に必要だったのは、口から音を出したら相手が「うん」とうなずいてくれる、あの一往復だった。通じた、という手応えが1回でも返ってくれば、私は次の1回に進める。単語帳が3ページで止まったのは、3ページ目までに1度も「通じた」が起きなかったからだ。

そこで私が最初に触ったのが発音を直してくれるツールだった。自分の声を録って、どこがネイティブとずれているかを目で見せてくれる。私の「th」がずっと「s」になっていたことを、生まれて初めて機械が指摘してくれた。壁が透明じゃなくなった瞬間で、はじめて手応えというものを英語で味わった。→ speek(英語発音矯正)の無料トライアルを見る

発音が完璧になったわけじゃない。ただ、返事が来るようになった。私が声を出すと画面が反応する。この小さな往復が積み上がると、単語帳を開くときの気分がまるで違う。今度は覚えた単語を早く声に出したくてページをめくった。同じ私でも、返ってくるものがあると手が止まらない。


初心者の私が現地で崩れるのは、通じない最初の3日だと気づいた

「日本人が多い学校を選ぶと失敗する」という助言を、私はずっと立地の問題だと思っていた。日本人比率が低い校舎を選べば解決する、と。実際に体験談を10本くらい読み込んでいくと、話が違った。日本人が少ない校舎でも、日本人同士でつるんで帰ってくる人はいる。逆に日本人が多い校舎でも、最初の数日で英語の輪に入り込んで伸びる人もいる。分かれ目は比率じゃなかった。

分かれ目は、通じなくて怖い最初の数日に、どこへ逃げるかだった。空港に降りて、寮に着いて、初回のマンツーマンで先生の英語が半分も聞き取れなくて、頭が真っ白になる。この瞬間、日本語が通じる相手が視界に1人でもいたら、人はそっちへ流れる。安心できるから。そして1度その回路ができると、辛くなるたびに同じ場所へ逃げるようになる。休み時間は日本語、食事は日本人と、夜は部屋で日本語のnote。1週間があっという間に日本語で埋まる。

マンツーマン主体でも、逃げ道を持って行くと口を閉じる

セブは1対1のレッスンが多いから話さざるを得ない、と言われる。半分は本当だけど、逃げ回路を抱えたまま行くと、そのマンツーマンの中でも私はきっと最小限しか喋らない。分からないふりをして先生に喋らせて、うなずいて、25分をやり過ごす。そういうサボり方は1対1でも余裕でできる。学校のシステムが私を話させてくれるわけじゃなくて、私が話す側に立てるかどうかは、行く前の私の状態で決まっていた。

逃げ回路は現地に着く前に一度壊しておける

怖いのは、この逃げ回路が現地で固まってしまうことだ。着いてから直そうとしても、もう辛さの真っ只中にいるから直せない。だったら、日本にいるうちに「通じない怖さ」を1回でも通過しておけばいい。初対面の外国人と、へたな英語で、聞き取れなくて、それでもなんとか単語をつないで話が続いた、という経験を出発前に1回でも作っておく。その1回があると、現地の初日の真っ白が、真っ白のままでは終わらない。

私が使ったのはオンライン英会話の無料体験だった。自宅の椅子に座ったまま、画面の向こうの先生と25分。最初の3分は心臓が痛くて、名前すら噛んだ。でも先生が笑って待ってくれて、私のたどたどしい自己紹介が最後まで届いた。通じない怖さと、それでも通じる経験を、セブに大金を払う前に自分の部屋で味わえた。→ DMM英会話のオンライン無料体験レッスンを受けてみる

この25分を3、4回くり返しておくと、体が「外国人と英語で話す」という状況に少しだけ慣れる。慣れた状態で現地に降り立てば、初日の混乱で日本語の輪に逃げ込む確率が下がる。逃げ回路が固まる前に、別の回路を先に通しておく作業だ。


1週間しか取れない私に「短いから失敗」は呪いでしかない

営業事務の私が現実に取れる休みは、頑張って1週間から2週間。3か月も半年も、どう転んでも無理だ。なのに失敗談の多くが「短期は中途半端で伸びない」と書いていて、読むたびに、じゃあ私はスタートラインにすら立てないのか、と落ち込んだ。

短い期間の何が問題なのか、具体的に想像してみた。1週間の留学だと、着いた初日は移動と手続きで潰れる。2日目、3日目はまだ耳が英語に慣れなくて、先生の言葉が音の塊にしか聞こえない。4日目あたりでやっと少し聞こえ始める。5日目で「あ、慣れてきたかも」と思ったところで、6日目は帰国準備、7日目は空港。つまり慣れてきた頃には終わっている。短さそのものが悪いんじゃなくて、慣れるまでの数日を現地で使い切ってしまうのが問題だった。

現地で慣れる数日を、日本で先に消化しておく

だとしたら、耳と口が英語に慣れるプロセスの前半を、日本にいるうちに終わらせておけばいい。出発前の1か月、週に2、3回オンラインで先生と話しておく。すると、着いた初日から耳がある程度動く。移動で潰れる1日目を除けば、2日目からもう本題に入れる。慣れる前の卒業を避ける手は、現地の時間を増やすことじゃなくて、現地に着く前の自分を前に進めておくことだった。

私が計算したのはこうだ。出発の6週間前から週3回の体験と練習を積む。合計18回、1回25分として約450分、7時間半。この7時間半を日本で先に済ませておけば、1週間のセブが「慣れる前に終わる7日間」から「初日から動ける7日間」に変わる。同じ日数、同じ費用で、中身がまるで別物になる。


失敗の採点表を、心がけからやり方の順番に置き換える

ここまで解いてきて分かったのは、上位記事が並べる失敗の原因が、どれも私の心がけに向かって投げられていたことだ。事前学習しろ、逃げるな、話せ、我慢しろ。全部「あなたがちゃんとやったか」で採点する。でも私はその採点表の一番下に張り付く常連で、その表の前では一生動けない。

採点の基準を、私がどれだけ頑張ったかから、事前に手を打った順番があるかに置き換えてみる。すると、やることが心がけの問題から作業の問題に変わる。作業なら、続かない私でも1つずつ潰せる。

私が実際に踏んだ順番

まず、返事が返ってこない独学をやめて、声を出したら反応が来るツールから始めた。発音を機械に見てもらって、通じたという手応えを英語で初めて味わう。次に、通じない怖さと通じる経験を、オンライン英会話の無料体験で自宅にいるうちに通した。初対面の外国人と英語で話す状況に、体を慣らしておく。この2つで、現地の初日に日本語の輪へ逃げ込む確率を下げ、慣れるまでの数日を日本で前倒しした。

この順番のいいところは、どこにも「気合を入れろ」が入っていないことだ。手応えの返るツールを触る、体験レッスンを受ける、それだけ。強い意志がなくても、返ってくるものがあれば私は次に進める、というのを単語帳の失敗が教えてくれた。だから返ってくる仕組みだけを先に用意して、あとは私が続けられるように環境を整える。

今夜その場で踏める最初の1歩

続かない不安を握ったまま、また来月に送りたくなる自分がいる。分かる。私も去年から何回もそうしてきた。だからハードルは限界まで下げる。今夜やることは、留学の申し込みでも学校選びでもない。無料の発音ツールを開いて自分の声を1回録る、または無料体験を1枠だけ予約する。どちらも0円で、どちらも15分あれば終わる。

この1歩が、単語帳を3ページで閉じたときと決定的に違うのは、返事が来る側から始まっていることだ。私が声を出せば画面が反応する。私が話せば先生が答える。反応があれば、私は続けられる。5年後回しにして27歳になった私が、30歳までに間に合うかどうかは、今夜0円の1枠を予約するかどうかにかかっている。ボタンの手前でまた止まりそうになったら、思い出してほしい。止まっているのは意志が弱いからじゃなくて、返事の来ない場所に立っているからだ。返事の来る場所へ、今夜1歩だけ動く。


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