卒業後も口が動くのか。月10〜20万の投資を私は5年先まで信じられない

海外留学・ワーホリ

金曜の夜21時、私はソファに寝転んだままスマホで英語コーチングの料金ページをスクロールしていた。月額16万5000円、期間は3ヶ月から。合計すると軽く50万を超える。指が止まったのはそこじゃなくて、その下にあった卒業生の声だった。「担当コーチが毎日励ましてくれたから続けられました」。この一文を読んだ瞬間、私は画面を閉じた。励ましてくれる人が消えたあとの話が、どこにも書いていなかったからだ。

私は英語をワーホリのために勉強したいと言い続けて27歳になった。30歳までに行けなかったら、たぶんもう行かない。それが分かっているのに、机の上には手をつけていない参考書が積んである。過去に一瞬やる気になって始めたものを、日常の中で溶かして消してきた回数は数えたくない。だから月10万から20万を払うと決める前に、どうしても確かめたいことがある。伴走してくれる人がいなくなった卒業後に、私の口はまだ動くのか。この問いに答えてくれる記事を、私は探して探して、まだ見つけられていない。


「意味ある人・ない人」の仕分けが、いちばん肝心なところをすり抜けている

検索して出てくる記事は、判で押したように途中で「効果が出る人・出ない人」の仕分けを始める。出るのは目的が明確で、管理されたい人。出ないのは受け身で、時間を確保できない人。読んでいる最中は納得する。私は目的があるほうかもしれない、じゃあ大丈夫かな、と。

でも冷静に読み返すと、この仕分けの判定材料はぜんぶ受講している最中の話でできている。目的が明確かどうか、能動的に取り組めるかどうか、コーチと相性よくやれるかどうか。全部、コーチがそばにいる数ヶ月のあいだの様子だ。私が本当に知りたい「その数ヶ月が終わったあとどうなるか」は、この仕分けに一項目も入っていない。

これは巧妙なすり替えに見える。私が金曜の夜に不安だったのは、自分が受講中にサボるかもしれないことじゃない。むしろ月16万も払えば、期間中は意地でも続けるだろうと自分でも思う。50万払っておいてサボる人間はそういない。問題は、支払いが終わって、毎朝の課題チェックが来なくなって、週1のセッションがなくなった日常の話だ。そこで私の口が止まるなら、50万は3ヶ月だけの体験で終わる。

思い出すのは去年の秋のダイエットだ。10月から2ヶ月、オンラインのパーソナルトレーニングに申し込んだ。週2回、トレーナーがビデオ通話でメニューを組んでくれて、食事も毎食写真を送って添削してもらった。この2ヶ月で私は4キロ痩せた。効果は完璧にあった。問題はそのあとだ。12月に契約が切れた瞬間、私は1週間で運動をやめた。写真を送る相手がいなくなったら、記録すること自体が止まった。年が明けたころには体重は元に戻っていた。

あのとき効果があったのはトレーニングじゃない。写真を送る相手がいたことだった。相手が消えたら習慣ごと消えた。英語コーチングの卒業後に私が怖いのは、まったく同じ映像がもう一度再生されることだ。


私が本当に払っているのは「他人の目」で、それは持って帰れない

コーチングが効く仕組みを、私なりにあのダイエットで理解してしまった。月10万から20万を払って手に入るのは、他人の目だ。毎日課題を提出する相手、進捗を確認してくる相手、週に1度話を聞いてくれる相手。この他人の目があると、人はだいたい動ける。私も動けた。

ここに落とし穴がある。他人の目はレンタル品だ。契約している期間だけ借りていて、支払いが止まれば返却する。返却したあとに残るのは、他人の目に見られていた記憶だけで、他人の目そのものは持って帰れない。

これがなぜ怖いかというと、続いていた行動が全部その借り物に支えられていたからだ。私が去年の秋に運動を続けられたのは、運動が習慣になったからじゃなくて、写真を送らないとトレーナーに心配されるのが気まずかったからだ。気まずさが消えた瞬間、続ける理由もいっしょに消えた。行動を支えていた土台が、自分の内側に1ミリも移っていなかった。

英語コーチングの多くは、この借り物の目をどう濃くするかを売りにしている。毎日のチャットサポート、専属コンサルタント、24時間以内の返信。全部、他人の目の密度を上げるサービスだ。密度が上がれば受講中の伸びは確実に良くなる。でもその密度が高ければ高いほど、卒業した瞬間の落差が大きくなる。毎日誰かが見ていた状態から、誰も見ていない状態へ、いきなり切り替わるからだ。

だから料金ページの卒業生の声で「毎日励ましてくれたから続けられました」を読んで、私は不安になった。それは、励ましがなくなったら続かなかった、と裏返しで言っているように聞こえたからだ。私はこの落差を自分の体で1回すでに経験している。もう1回、今度は50万をかけて経験したいとは思えない。


「卒業後も自主学習を」というアドバイスは、いちばん難しいことを丸投げしている

上位の記事の多くは、この不安に対して一応の答えを用意している。受講後も自主学習を継続しましょう、学んだ勉強法を自分で回し続けましょう、と。正しい。反論のしようがないくらい正しい。でもこのアドバイスは、いちばん難しいことを「あなたがやってください」と丸投げしているだけだ。

そもそも私がコーチングを検討しているのは、自主学習が続かないからだ。単語帳が3ページで止まり、アプリが3日で開かなくなる人間だから、お金を払って他人の目を借りようとしている。その私に向かって「卒業後は自分で続けましょう」と言うのは、泳げないから浮き輪を借りた人に「浮き輪を返したあとは自分で泳いでください」と言うのに近い。返した瞬間に沈むから浮き輪を借りたのに。

ここで見落とされているのは、続けられる人の内側で何が起きているかだ。習慣が身についている人は、意志の力で続けているわけじゃない。歯磨きのように、やらないと気持ち悪い状態に行動が組み込まれている。この状態を作るには、他人の目がある期間中に、他人の目に頼らない小さな回し方を並行して育てておく必要がある。ところが多くのコーチングは受講中の伸びを最大化するために他人の目をフル稼働させる。その結果、卒業時に自走の筋肉がほとんど育っていない。

去年の秋の私に足りなかったのは、まさにこれだった。トレーナーがいる2ヶ月のあいだに、トレーナーがいなくてもできる最小の運動を1つでも自分で回す練習をしておけばよかった。でも私は毎回トレーナーの組んだメニューをこなすだけで、自分でメニューを作る場面が1度もなかった。だから契約が切れた日、私はゼロから自分で運動を組み立てる方法を知らないまま放り出された。知らないことは続けられない。

英語も同じだ。卒業後に残したいなら、受講中から「コーチがいなくても今日これだけはやる」という1日10分の最小行動を、自分の手で回す時間を持っておかないといけない。それをやらせてくれるコーチングを選ぶか、自分でその時間を確保するか。どちらにしても、卒業後の話を受講が始まる前に考えておく必要がある。


50万を払う前に、私は「口を動かす場所」が卒業後も残るかを見た

ここまで考えて、私は方針を変えた。受講の密度を比べるのをやめて、卒業したあとも私が口を動かせる場所が日常に残るかどうかを先に確かめることにした。

私にとっての英語のゴールはワーホリだ。だとすると必要なのは、TOEICのスコアを短期で上げることより、知らない人と英語で話し続けても止まらない口だ。この口は、コーチが横で励ましてくれる環境で作るより、実際に話す場数の中でしか育たない気がした。しかも、その場が卒業後もそのまま残っていてくれるものなら、落差の問題も起きない。

そう思って調べていて気になったのが、留学という選択肢だった。数ヶ月コーチングに50万を払って卒業後に消える不安を抱えるより、その予算を実際に英語を使う環境に置くほうが、私のゴールには近いんじゃないか。ワーホリの前段階として短期の語学留学を挟めば、口を動かす場そのものに身を置ける。費用がどのくらいかかるのか、まず具体的な数字を知りたくなった。

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見積もりを取ってみて分かったのは、行き先や期間によって金額の幅がかなり大きいことだった。国内でコーチングを3ヶ月受ける50万という金額が、留学の世界だと何ができるのか。この比較を、感覚じゃなくて具体的な数字で並べて見られたのは良かった。少なくとも私は「コーチング一択」だと思い込んでいた頭を1回冷やせた。

もうひとつ、私が引っかかっていたのは、留学は行けば英語が話せるようになる魔法じゃないという点だ。現地に行っても日本人とばかり過ごせば、去年のダイエットの繰り返しになる。だから留学を選ぶなら、目的とプランをちゃんと相談できる相手がほしかった。ワーホリにつなげる前提で、どんな都市で、どんな環境を選べば私のゴールに届くのか。そこを人と話しながら詰めたくて、無料のカウンセリングを申し込んだ。

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カウンセリングを受けても、その場で契約する必要はない。私が確かめたかったのは、コーチングと留学それぞれが自分のゴールにどのくらい近いのか、費用と期間を並べて考えるための材料だった。勢いで50万の申し込みボタンを押して数ヶ月で終わらせる前に、この材料を手元に集めておくだけで、選ぶ精度が変わる。


今日の夜、私が実際にやった3つのこと

不安を抱えたままでも、今日その場で踏める一歩はあった。私が金曜の夜に実際にやったのは3つだ。

1つめ。ノートを開いて、卒業後の自分を1行で書いた。「6ヶ月後、初対面のオーストラリア人に自分の仕事を英語で説明して、相手の質問に止まらず答えられている」。スコアじゃなくて、口が動いている場面で書いたのがポイントだ。この1行があると、コーチングでも留学でも、選ぶときに「これはこの場面に近づくか」で判定できる。ぼんやり「英語ができるようになりたい」で選ぶと、受講中の伸びの気持ちよさに流されて、卒業後の場面を見失う。

2つめ。今日から1日10分だけ、他人の目がなくても回せる最小の行動を1つ決めた。私が選んだのは、寝る前に今日あったことを英語で3文だけ声に出すことだ。誰にも提出しない。添削もされない。だからこそ、支えてくれる人が誰もいない状態でどれくらい続くかを、お金を払う前にテストできる。もしこの10分が3日でつぶれるなら、私は他人の目に頼りきりの構造から抜けていない証拠だ。逆にこれが2週間続けば、私は他人の目なしで動ける自分を少しは持てている。50万を払うかどうかの判断材料が、自分の手元でひとつ増える。

3つめ。留学の見積もりとカウンセリングの申し込みを、その夜のうちに済ませた。数字と相談相手を先に確保してしまうと、選択肢を感覚で比べるのをやめられる。コーチングの料金ページを閉じて「今年もいいや」と後回しにする、あの毎年の流れを、今回は数字で止めにいった。

この3つに共通しているのは、どれも受講中の密度を上げる話じゃないことだ。卒業後に残る自分を先に決めて、他人の目なしで動ける自分をテストして、選択肢の数字を並べる。順番がこうなっていると、たとえ最終的にコーチングを選んだとしても、卒業後に消えるパターンに落ちにくくなる。


後回しにしてきた5年を、判定材料で終わらせる

私は英語を5年後回しにしてきた。後回しにできたのは、いつも判断を「やる気が出たら」に預けていたからだ。やる気が出た夜に高額な申し込みボタンの前まで行って、卒業後の不安に足を止められて画面を閉じ、また来年に持ち越す。この繰り返しを5回やった。5回とも、判断材料は感覚だけだった。

今年違うのは、感覚のかわりに材料を集めたことだ。卒業後に立ちたい場面を1行にした。他人の目なしで10分回るかを自分で試している。留学の費用の実数を見積もりで持った。カウンセリングで相談相手を確保した。この4つがそろうと、コーチングを選ぶにしても留学を選ぶにしても、卒業後に消えるかどうかを事前に見積もれる。少なくとも、去年の秋のダイエットのように契約が切れた1週間後に全部が消える映像を、指をくわえて待つ立場からは抜けられる。

月10万から20万という金額は、私にとって軽い額じゃない。だからこそ、その効果がコーチという伴走者のいなくなった卒業後にも残るのかを、払う前に見ておきたかった。答えは受講の密度の中にはない。卒業後に立ちたい場面から逆算して、他人の目なしで動ける自分を少しずつ育てられる選び方をするかどうかにある。

今夜、寝る前に英語で3文だけ声に出す。相手はいない。でもこの10分が、私が5年ぶりに感覚じゃなく手を動かした最初の材料になる。ワーホリまで、まだ間に合う。


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